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『ザ・ファブル』と日本映画で暗躍する組織について

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という記事タイトルにしたけど、何のことはない。映画『ザ・ファブル』を観ていたら、原作にあった単語

  • ヤクザ

といった言葉が全て

  • 組織
  • カンパニー

に置換されていた。これは日本映画あるあるで、やたら「組織」という曖昧な単語を使いたがる。日本映画では「恐ろしい組織」というのがよく出てくるけど何の組織かはよくわからない(注:ファブルは原作でも「組織」という曖昧な言葉が連発されているので、映画が悪いわけではない)。実在する企業や団体名をバンバン出して悪口を言うアメリカ映画とは大きく違う。そして「組」以外にもう一つ消えていた単語があった↓

デリヘル

『ザ・ファブル』では「デリヘル」という単語が一切登場しなかった。すべて「花屋」に置換されていた。映画館では私の後ろの席に小学生高学年くらいの男の子がいたんだけど、怖い人たちが花屋を開くというシーンで男の子は本当の花屋だと思ったらしく
「ぶわはは!花屋だって!」
と大声を出して、映画館内の雰囲気をずいぶんと気まずくしてくれた。

デリヘルが無くなった影響

派遣型売春を「花屋」と表現するのは今も昔も日本でも世界でも同じなので言葉の置換としては問題ない。ただ原作にあったデリヘルを巡る攻防も大幅に無くなっているので、刑務所から出た小島が社長を殺害する意味(デリヘルの社長だった)や、砂川と小島が対立する意味(砂川のシノギはデリヘルなので、デリヘルを始めたい小島とは対立する)が分からなくなっている。とはいえ脚本が上手く機能しているので、デリヘル要素が無くなっていても話の筋には問題なかった。原作にあった盗撮やエロ仕事の描写は生温くなる一方で、死体の数は桁違いに増えているので映画的には正しい選択をしている。

最近の日本映画の傾向

『ザ・ファブル』は面白かった。原作再現度が高いし、アクションは楽しいし、原作エピソードのまとめ振りが見事だった。数年前までは漫画が実写化されると「これだと原作かんけーねーじゃん!」という怒りの声が渦巻いたこともあって、最近のマンガ実写化は「原作マンガをいかに実写で再現するか」という点に全力で尽くしている。

ただ一方で日本映画ならではの欠点もあった。私が気になったのは

殺人者(福士蒼汰、柳楽優弥)が「ギャハハ」と笑いながら人を殺す

⇒これは日本映画で大量発生している殺人鬼像だ。もちろん原作とかけ離れている。福士蒼汰のキャラなんて原作だと寡黙だ。イケメン俳優が殺人鬼を演じるときは、なぜかサイコパスになるんだよね。ガチの殺人者はマズいという、事務所の判断なのかな。

主題歌の歌詞と映画の内容がまるで合ってない

⇒レディ・ガガの『ボーン・ディス・ウェイ』が流れたときはズッコケそうになったけど、Twitter検索かけると「ガガが流れるからファブル観に行く!」という意見がメッチャ多いんだよね…。

でもまあ、こういう改変があるからこそ『ザ・ファブル』は小学生でも観に行ける大ヒット作になったのだ。
ちなみに原作だと手作り銃の製作過程を細かく描くのですが、これも映画だと大幅カット。真似されたら大変だからね...。


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